こんばんわ。テントの中です。
平日の一泊二日、市内のキャンプ場にお世話になった時の話です。
自然いっぱいのTオートキャンプ場、自然の中で心休めたい気持ちと、娘を遊ばせたい気持ちから平日に一泊キャンプをすることにしました。
チェックインの13時の5分前には到着。受付の方から
「本日はお客様含め2組です」
と案内を受けつつ、手早くチェックイン。
今時分はコロナ禍ということもあり、発熱の有無、持病の有無について誓約書を取る徹底ぶり。
Tキャンプ場には、高地がオートサイト、低地がフリーサイトと二つのエリアが大きく離れています。
どちらも自然が楽しめること、子供が好きなアスレチック遊具があることは一緒ですが、フリーサイトは近くに池があり、自然ほったらかしな感じがとても良い場所。到着したけど誰もいない。
我が家のテントは、ogawaのグロッケ12。6人ぐらいは余裕を持って寝られるワンポールテント。フライシートとグランドシートが独立しており、トグルで接続するため、かえしはあっても、時折アリさんが侵入するのが難点。
今日は娘と二人の為、テントを5分の3に区切ることができるハーフインナーを取り付け、テント内に就寝スペースと食事スペースをそれぞれ確保。インナーテントを使うと、タープを使う必要がなくなるのが手間がなくて最高なんです。
設置場所は、桜の木が二本ある遊具のすぐそば。前回のキャンプでColemanのノーススターによって溶かされたテントの一部を補修しながらなんやかんや二時間程かけて諸々設営完了。
五月の半ばで、お花見キャンプができる幸せ。タイ産冷凍焼き鳥20本入り700円を手軽に炭火焼き。4本だけ残して、りんごチップでスモーク。舌鼓を打つ。
「最高のひとときよ」
娘もひたすらに遊んでおり、夕方には晩飯もそこそこに、インナーテントに籠りミッキーマウスクラブハウスを見だす。
「あ!狸か、狐いたよ」
「うそ、ほんと?、どんな形だった?」
「暗くてよく見えなかったけどシュッとしてて狐っぽかったかも、すぐいなくなっちゃった」
なんだー、と言いながらすぐ興味を失った娘はまたテントに籠りだす。
その間、私は第二弾のスモーク枝豆で、桜を愛でながら小腹を満たしのんびりと時間が過ぎていくのをただ、ぼーっと感じる。
「イマココを感じてるわー」
あらかた満足したので、インナーテントに入り、Amazon primeの内村さま〜ずの超大自然クイズ回を見たところで就寝。
昨日、今週分のおぎやはぎのめがねびいきは聞いたので、今日の夜は、バナナマンのバナナマンゴールドを聴きながら寝ることに。
「ガサガサ・・・ガサガサ」
風かな?
「ガサ、ガシュガシュ、シャシャシャ」
いや、風じゃない。なんかテント擦ってんな。狸か狐がテントつついてるのかな。テントはファスナー閉めて入口閉じてるし、テント内に食べ物とゴミはすべて撤収してるし、そのうちいなくなるだろと放置。
「ガサ、シュシュシュ、バタン、ドタン」
む?なにごと、なぜ、こんな音がなる?
「シュルシュル、シャシャシャ、ギシギシ」
まじかよ、完全にインナーテントのすぐ外を回るように走り回ってる。あ、インナーテントの屋根に登ってきた。「ちくしょう、おりろ!」とばかりにテントの内側から叩くも自由に動き回り手応えなし。
あっちこっちインナーテントの内部から叩き落とそうと試みながら、「あーあ、アリさんじゃなく小動物入ってきたわー」とフライ・グランドシート一体型テントではないことにゲンナリする。
「ドタン、ガタ、シャシャ」
だめだ、ちょっと時間かかるかも。このままだと拉致があかん。外に出て追い出さねば、そのためにはまず視力0.1では戦えん。
「まず、コンタクトしよう」
努めて冷静に、走り回っている狸をよそにコンタクトを装着。娘は寝かせたまま、万が一にもインナーテントに入れるわけにはいかないので、入り口のファスナーを上部まで引き上げて、上から下へファスナーを少しずつ降ろし、外の様子を見る。
「すぐ外にはいない、しゃあない、でるかー」
右手にアウターをぐるぐる巻にして持ち、インナーテントの外に、あいつはどこだ、いた!
たぬきか。
インナーテントの上部、ポールにしっかりしがみつき、こちらに敵意剥き出しで、青い目を爛々とこちらに向けている。勘弁してくれーと、アウターでぐるぐる巻にした手でなんとか狸を落とそうと試みるもぜんぜんへこたれない。
少しふらつくも上手にポールにしがみつき、こちらを人睨みして、
「シャーっ!!」
と威嚇。再度、落とそうとしても、インナーテントの奥側に逃げ込み、爪を立てつつしがみつく。「勘弁してくれテントやぶれてんだろうなー」と思いながらも、狸って意外とこんな高いところも軽快にのぼるんだなと感心してしまう。
・・万が一にもインナーテントに破れ入ったら娘に危害を及ぶかもしれん、早く落とさねば!
くそ、いっそ、両手ぐるぐる巻きにして背中掴んで落としたいが今更そんなこともできん。叩けば、しがみつく、奥に逃げる、威嚇するの一進一退。
やればやるほど事態が膠着する、、、、ん、やればやるほど膠着?
・・ん、あれ、これどっかで同じ状況あったな。
北風は旅人の服を脱がそうと強い風を吹かせるが、旅人は飛ばされまいとむしろ前より必死に服を守った。
一週間前に娘に話して聞かせた「北風と太陽」とおんなじじゃん。人を動かすには無理矢理ではなく、相手のニーズを汲み取って・・うんぬんかんぬんと5歳児に話して聞かせたあの時の話。
・・次第に冷静になっていく。
目を合わせたまま後退りしながら、とりあえずテントの入口のファスナーを全て開放してトグルで固定。大きく入口を広げ、テントの外から狸を静かにみる。さらに入口から少し離れて様子を伺う。
・・するとポールの上にいた狸がスルスルスルと降りてきて、ノソノソとした歩速で開けた入口からでてくる。
そしてそのまま、森の方へ。
さっさといってとばかりに多少追い立てる素振りをみせても落ち着き払った様子で、ゆっくりと森の奥へ歩き去っていく。
とたんに静寂が帰ってくる。
狸が寄ってきた理由かも知れないテント内のゴミを集積場に持っていき捨てる。インナーテントの娘の様子を見る。やや起きている様子。「狸が来てたんだよ」と告げるも特に反応はなく寝ぼけているのか、そのまま寝てしまう。
時間は深夜0時39分。
「はぁ、ひとまずやっと終わった。」
北風と太陽ありがとう、童話は普遍的な教えがいっぱいあるわ〜、と思いつつ、私はこれからこのキャンプ場に来るたび、滅多に起きないことを過大評価し、びくびくしながらキャンプするんだろうなー、と考えてしまう。
ダニエル・カーネマン(著書ファスト&スロー第四章「めったにない出来事」)何回も聞いてるから、統計的に考えれば必要以上に気にする必要はないはず、なんだけどなー、なかなか割り切れんぜ。あー、トイレに行くのやだな。
・・・まぁでも今日のことは、記憶が新しいうちに記録しとこ。
という狸も私も、疲れた夜でした。
おわり。