誘惑に抗えない。しかし後悔は先に立たない。
「やあ、調子はどうだい?僕は絶賛後悔中さ」
爽やかにネガティブだね。いったいどうしたんだい?
「まあ、かんたんにいうとキャンプギアを買い漁った。気づいたら諭吉さんが3人去っていった。ほのかな満足と同時に後悔を感じている」
ああ、そういうことね。浪費とはいえ、君が幸せを感じるのであれば他人がとやかくいうことじゃないんだけどね。
同情の余地はないにしても、かけがえのない君のことだ。少しだけ心配するよ。
「少しかい、もうちょっと心配しろよ」
自分の判断だろ、まあ少しだね。
・・とはいえだ。目の前の誘惑に打ち克つってのは、人間そう簡単にできるものでもない。
僕だって禁酒中にローソンで新発売のビールを見た時はつい買ってしまったしね。人のことはいえない。いや、ほんと困ったもんさ。でもしょうがないクーポンがその日までだったんだからね。
つまりだ、目の前に魅力的なものがあったら、もっともらしい理由をつけてでも買ってしまう。それぐらい目の前の魅力に人は弱いもんさ。
だからこそ、そんな誘惑には打ち克ちたいもんだよね。できたら君にもそうあって欲しいしね。
「・・・」
さて、どうしたものかな。一応有名な方法はあるんだけど、一応聞いていくかい?
「聞かない理由はないよ、さっさと教えろよ」
そうだね。なんというか自分にプログラミングするみたいな方法さ。
「なんだい、それは?」
イフゼンルールって聞いたことあるかい?
イフゼンルールって聞いたことあるかい?
「ifなになに、thenほにゃららってやつだろ。なになにならば、ほにゃらら的なまあまあ基本的な構文じゃないか」
ああ、なるほど初耳ってことだね。いや、全くその通りなんだけどね。心理学で「実行意図」と呼ばれているものさ。
大まかな話だけどね。
〇〇という状況になった時、私は⬜︎⬜︎という反応をする。
こんな条件を自分にプログラムすると、実行する可能性ってのが何もしない時より2倍くらいにはなるらしい。そういう話さ。
「ほんとかよ」
いやはや、全く眉唾もんだけど、心理学の有名な実証研究の結果さ。モチベーションを高めるよりも、高い効果があるってのが意外な話さ。
代替イフゼンルールで華麗に誘惑を交わす。
これを習慣に応用することもできるわけだが、ひとまず置いといて、キャンプギアを衝動買いするケースに当てはめてみようぜ。
欲しいキャンプギアを買いたいと思った時・・・さて、どうする?
「そうだね、シンプルに買わないようにする、ってのはどうだい?」
「もしくは、無心になって通り過ぎる、ってのでもいい」
・・ちなみに過去に試した事はあるかい?
「無心になってというのは試した事はあるな。結局買ったけどね」
だろうね。まあ、それができる精神状態なら苦労はしない。両方ともおすすめはしない。
特に「買わないようにする」ってのはやめたほうがいい。買わないようにしよう、と思うほど買いたくなるもんさ。
「じゃ、どうしたらいいんだい?」
代替手段に置き換えるのさ。否定も無視もしない、真摯に受け止め、心に逆らわない。そうして好ましい行動や反応に置き換えてみるのさ。
たとえばさ。
(if)欲しいキャンプギアを買いたいと思った時、
(then)一日考える時間を設ける。
とかね。別に買ってもいいんだよ、それくらいの心構えさ。そういえば、僕は偶然にも似たイフゼンルールを無意識に使っていたな。聞きたい?
「まあ、言うだけ言ってみなよ」
深夜におもしろいネタが浮かんだ時、1日置いて見直す。深夜のテンションで考えたもんは割と失敗しがちという僕の経験さ。
「・・・」
まあ冗談はこれくらいにして、代替行動でイフゼンルールをつくってみる。まずはこれをやってみたらどうかな?
実行意図ってのがホンモノならまあまあ良い結果が得られると思うぜ。さて、僕の少しだけの心配ってやつは君に届いたかな?