活かす力

マルチタスクをやめないと起こること。頭の中の環境づくりで自分を活かす。

マルチタスク否定の男。脳環境の話。

「君はさ、マルチタスクはやめようと言っていたよね?」

なんだい、食事中に突然、もうちょっと楽しい話じゃダメなのかい。

「ごめんごめん、もうちょっと君の考えを聞いておきたくてさ。で、どうなんだい」

もちろんそうさ、二つ以上のことを同時にするもんじゃない。前から言ってるだろ「ぜんやさん」が苦しむだけだって。

「ん、ぜんやさん?そんなこと言ってたっけ」

言ったさ。マルチタスクは「脳が二つ以上のことを同時にする状態」だ。

なにかをしようと意識した時、いろいろなことを考えてやってくれるのが「前頭前野(ぜんとうぜんや)」っていう脳の一部じゃないか。

「ああ、脳のはなしね、勝手に擬人化しないでくれよ」

その「前頭前野」は、二つ以上のことを同時に意識することはできないんだ。

どんなに「ぜんやさん」がすごいやつでも、サッカーと野球とバスケは同時にできない。

たしかに同時にできれば凄いんだけどね。
なかには同時にできるって誤解している人もいる。

でも実際はできない。

例えていうなら、グラウンドと球場と体育館がすごく近くにあるだけで、間違いなく移動はしてるんだ。

サッカーしてる最中にハーフタイムで球場に行って、ラッキーセブンの七回裏が終わったら体育館に直行。第4クォーターはバスケする。そんなことが起きてる。

中途半端にしかできてないし、行ったり来たりも大変なんだよ。集中は途切れるし、次の試合に集中するのにも時間がかかる。

そのうち、野球帽被ったままサッカー始めたり、うっかりバスケボールを蹴り出したりするのさ。

だからね。マルチタスクなんてもんは「ぜんやさん」をしこたま働かせるだけのブラックな働かせ方で、脳にとっていいことなんて全然ないんだよ。

・マルチタスク:二つ以上のことを同時にすること
・脳の一部「前頭前野」は二つ以上のことを意識できない。
・マルチタスクは生産性を下げ、脳にとっていいことがない。

マルチタスクのデメリット。

せわしなくたくさんの刺激を脳が受ける。
つまりマルチタスクをすると前頭前野が縮んで、認知機能が低下するんだ。

普段「ニンチキノウ」なんて言葉、なじみがないし使わないからピンともこないだろ。僕もそうさ。

「認知機能」というのは、

憶えたり、
考えたり、
決めたり、
理解したり、
計算したり、
学んだり、

することができる体のしくみのことだよ。
これがうまくできなくなるって怖くないかい?

車のアクセルとブレーキを間違って踏んでしまって大事故になる、そんな話聞いたことあるだろ。

「ん〜、ある。怖いね」

次から次へと「あれしなさい」「これしなさい」「あんなこともやらなくちゃ」といろんなことで頭がグルグルいっぱいになってると「いろんなこと一辺に言わないでくれー!」と思うじゃん。

憶えられないし、考えられない。
わからないから、決められない。そんな感じさ。

MRIってやつで脳の様子を見てみると、脳がもがいているらしい。それはまさしくマルチタスクで一杯一杯の僕らがもがき苦しんでいる様子そのままだと思うな。

優先順位が決められないようなことをたくさん抱えると不安になるしストレスにもなる。まさしくマルチタスクさ。

そうしてストレスから身を守ろうとストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールが体の中で分泌されるんだ。

少しなら問題なくて、むしろストレスから身を守るために必要なんだけどね。それがず〜っと続くと支障がでてくる。

問題を解決する、感情を整える、つらいときでもがんばる、衝動をおさえる、そんな力がなくなると言われているんだ。

もちろん。僕も経験あるよ。マルチタスクだけが原因じゃないと思うけどね、抑うつっていう心の病気に昔なったことがあるよ。

そういう仕事をしていた時は、同時に二つどころか10こくらいはやろうとしていたさ。

ノートがやることリストでいっぱいなんだ。管理できていることにちょっとした満足も覚えていたよ。あれは良くなかった。

みんなが僕に話しかけるんだけどね。
笑顔で「どうしたの何か困ったことあった」と応じながら、心の中では叫んでいるんだよ。「もう勘弁してくれ!」ってね。

「ニンチキノウ」がうまく働かなくなったんだね。きっとさ。

・忙しなく沢山の刺激を脳が受けると認知機能が低下する。
・認知機能:思考・判断・理解・計算・学習などを司る機能
・マルチタスク:問題解決・感情調整・逆境を乗り越える・衝動を抑える力が低下する。

ひとつのことに集中するメリット。

マルチタスクをやめて、ひとつのことに集中し没頭すると『フロー」って状態に入ることができると言われているんだよ。

ミハイ・チクセントミハイという変わった名前の心理学者が言い出したことさ。

かんたんにいうと「我を忘れるくらいすごい集中していて、いつもよりなんでもできる状態」のことさ。

ゾーンとか、無我の境地っていう人もいるみたいだね。
そりゃいい結果はでるよね。なにせこれ以上ないくらい目の前のことに集中しているわけだからね。

なにかひとつのことに没頭できている状態はね。
「幸せな気持ち」や「安心な気持ち」が生まれ、いろんなことにチャレンジしようという気になるそうさ。

悪くないだろ?

ずっと前に、経験したことあるけど、「うぉーっ、今ならなんでもできるぜ!」って感じかな。

ゲームしててもそんな感じになる時があったね。対戦型ゲームをやっていた時さ。今日の僕は誰にも負けないってね。そうして実際勝ち続けるんだよ。

ところがふとしたことで我に帰った途端、コロッと負けちゃうんだ。不思議な経験さ。

僕の場合は、ゲームセンターに叔父がたまたまやってきたことに気づいたしまって集中が途切れた。

まあ、どうでもいい話だったね。

話を戻すけどね。こんな感じの時はね。「充実感」や「達成感」もあるんだよ。「うまくできた!」って感覚は楽しいし、気持ちいいよね。

もちろん、自分の能力を信じられる気持ちにもなるし、不安なんてそれこそ感じない

マルチタスクをすると、フローに入ることは一切できなくなる。確率0%さ。

だからマルチタスクはやめて、目の前のひとつのことに集中しようってことさ。

さて、食べるのを中断して、話を聞くのに集中してくれたのはありがたい。まさしくひとつのことに集中している証拠だからね。

そんな君は、僕の話を聞いてなにか感じ取るものはあったかな?

「ああ、君の話は充分理解できたよ。それこそ君の言ってることを信じる根拠になったさ。ありがとう」

・ひとつの事に没頭することで「フロー」状態に入ることができる。
・フロー:我を忘れるくらい没頭し、高いパフォーマンスを発揮できる状態。
・ひとつのことに集中するメリット
・幸福感
・安心感
・意欲
・充実感
・達成感
・自己効力感
・不安の払拭