自分のしたいことなんてないという話。
「君という人間に40年もつきあっているけどさ」
「君は生きてく中でなにをしたいんだい?」
そうだね。何もなかったよ。
でも今は、子供の教育。学ぶ力と生きる力を伸ばすことかな。
あと、キャンプ大好きだよ。
「それは知ってる、それよりさ、したいことがないとは興味深いね」
なんというか、みんながしたいことが僕のしたいことだったのさ。例えば、家族や友達が幸せになれば当然僕も幸せになるだろ。
だから、よく君のしたいことはなに?って聞かれると困ったものさ。なんせ、無いのだから。
ただ、この生き方にもちょっと困ったことがあってね。
どうしたって相手を気遣う生き方にもなってしまうんだ。
相手に合わせる生き方といってもいい。
別にアドラーが僕の哲学ってわけじゃないけどさ、他人に合わせる生き方には無理がくるもんだ。
あの人はこういってる。この人はこうしたい。
どうしよう。何か良い折衷案はないものか。こんな調整ばっかりしていたよ。
僕自身のことは殺してね、自分を説得するんだ。僕は我慢すりゃいいってね。
そうして、誰かに尽くし尽くす。ただ、周りは思ったほどには返してくれない。
こんなにやってるのに返してくれないと嘆くわけさ。そうして、ちょっと困ったことになってさ。
抑鬱ってやつとお友達になったわけさ。
まあ、もしかしたら早く診断受けて「休みたい」と思ったのが本音かもしれない。
いや久しぶりだったよ。
心の底から自分の為になにかしたいと思ったのはね。
それが休みたいってのはなんだかゾッとするんだ。
僕は僕をこんなに押し殺していたのかと思うとね。
僕ってやつを探す。僕のしたいことを探す。
ちょうどその頃、子供も生まれてね。療養と育児をするということで、育休を取ることになったんだ。
こんなタイミングじゃないと、男の長期育休なんてとれる雰囲気ではなかったと思うよ。そういう意味ではお友達に感謝さ。
休みの際は、みんなからなんもせずいいから休め、なんていわれていたけど性分じゃなくてね。「僕がしたいこと」ってやつがなんなのか知りたくなったんだ。
まずは、僕の内面ってやつを理解してみようとVIAってやつをやってみた。いわゆるストレングスファインダー的なもんさ。
あと、ビッグファイブ理論にも当てはめてみた。科学的に唯一根拠があるというからね。科学で診る性格診断的なもんさ。
どれが正しいとか、正確とか、そんなことを語るつもりはないんだ。自分の内面を知るのに、実感を得られればいいと思っていた。だから、結局この二つだけで充分だったな。
そうして、生き方の方向を定めたのさ。まあこんな感じさ。
『自ら公正であり、誠実に、よく学び、よく探究し、より良い形を産み出す』
いやはや、ずっと管理職やってるのに「君はリーダーシップが弱点だよ」という結果には笑ったし、納得したな。
シェアードリーダーシップという概念もあるから僕はそちら向きかもしれないと学びの中で思ったよ。
そうして、僕を奮い立たせる言葉ってのも欲しいと思ってね。
僕はすぐ「尽くし尽くす」傾向があるようだからさ。
自己犠牲的なのは、もっとも失敗するって、偉い教授がいっていたしね。そうならない為さ。それがこれだね。
『どうせだったら切り拓いて失敗してみせろ。
与えられたレールの上でチャレンジしてもそれは自分のアイデンティティへのチャレンジではなく、失敗ですらない。
いいか!未知に挑め』
こんなことを毎日のタスク表の目に入るところに書いてるよ。
僕はアイデンティティってやつがはっきりしてないのさ。
人と話すのは大好きだし、相談事に乗るのも好きなのに、自分のこととなるとどうやらからっきしなのは笑い種だね。
なんというかビジョンが見えてきたところで、僕のしたい事は、決まってた。
『僕みたいな人を作らないことさ』月並みだけどね。
教育することを教育する。まずは娘から。
そう考えるとさ。もちろん僕自身もそうなんだけれども、遺伝学的にどう考えても、そこで「ぐうすか寝てるうちの娘』からどうにかしたいな、とこう思った訳さ。
だからさ、子供の教育をしようと思ったのは。
生きる力、生きるために本質的に必要なことを知る。そこには学ぶってことも含まれるとは思うけどね。学ぶ姿勢だけではどうにもならないこともある。
だから、学び方ってやつも大事かなと思っているのさ。
生きる力がベクトルの向きだとしたら、学ぶ力はベクトルの大きさや長さってイメージかな。
まあ、学び、探求しながら形作っていきたいわけさ。
うまく形がつくることができれば、それは伝わるものだしね。
子々孫々と続いていけば面白いよね。
「教育することを教育する」って言葉があるけどそういう感じだね。好きな言葉だよ。
まあ、考えなんて時と共に変わるかもしれないけどね。
キャンプが実感させること。
ああ、それとキャンプはこれからもしていくさ。
あれはいい。
ソロキャンプなんか、一時的に社会的な繋がりから解放されて、社会の中で僕がなんなのかを考えさせてくれる。
僕がしたいことってのを考えるいい手助けになってくれる。
それに目の前のことに集中できるから、僕みたいなマルチタスク人間には自分をみつめる最高のアクティビティだよ。
社会の中で、自分の中で、「僕とは?」がなんなのか気づかせてくれる。自分を知らないとベクトルは引けないからね。
自分を知る力になってくれるので貴重な趣味さ。
・・まあ、ということさ。
僕のしたいこと。
僕がしたいことは、子供といったけれども正確には、教育を必要としている人に教育を届けることさ。
まあ、とりあえずキャンプしながら、5歳の娘にいろんなことを伝えていきたいものだね。これで答えになったかな?
『うん、ありがとう、つまりはそれが僕なんだね』
・・と書きながら自分を理解するお話。