プレッシャーに晒される日常
今日はお仕事でがんばっているパパさんやママさん向けのお話です。
育休復帰してまもない頃のお話、自分のデスクの隣の石田くん(仮称)がそれはもうとてもとてもテンパっていたわけです。
今に始まったことではないので、相変わらず変わらないなぁ、と思いながらも理由はなんとなくわかります。
自分のリソースに見合わない仕事を抱えて、
整理できてないスケジュールにパンパンになりながら、
部下の仕事をフォローしよう
としてる訳です。
本人に聞かなくても、心の声は聴こえてきます。
「あれもやんなきゃ、これもやんなきゃ」
「どうしよう、あれどこまでやったっけ?」
「残業すればどうにかなるはず」
「とりあえず頭冷やしにいこう」
私と性格的に似たタイプなので、過去の自己投影を見てるようで気持ちはわかります。そうして、不安と焦りのプレッシャーの中でする仕事は、大抵うまくいきません。
「ごめん、こないだの件、もしかしたらミスってたかも」と部下に謝罪しつつ仕事を見直す石田くん(仮称)。でもよくよく部下と見直すと結局ミスはない。
「あ、大丈夫だった!」
安堵と何やってるんだ、が入り混じった感情が漏れてきます。
はたからこういうやりとりが目に入ると相当焦ってるな、と思うものです。
今日はついつい他人に手を差し伸べてしまうような人が陥りがちなこのような状況にどう対応したらよいのか、というお話です。
プレッシャーへの立ち向かい方
さて、皆さんならこんなプレッシャーにどう立ち向かいますか・・?
結論ですが、私は基本的に3本立てで対応しています。
- 習慣化する(効率化する)
- 捨てる(ミニマライズして集中する)
- 感情を整える(邪魔ものを排除する)
プレッシャーがかかる場面で、ものごとをこなすというのはなかなかに大変な事です。
プレッシャー下でものごとを理性的にこなす上で大切なものが意思力です。理解したり、判断したり、記憶したり、想起したり、といった色んな思考をフル回転させてことに当たります。
その中で、習慣化はプレッシャー化に全力で意思力を使うことができるよう、余計なことにエネルギーを使わせずにすむことができるようになります。
また、自分の身の回りにあるものに優先順位をつけて、不要なものや、行為そのものを減らす努力をすることは、本当に大切なこと、大切な時に全力を傾けることができるようになります。
車で目的地に向かうイメージで例えるなら、
習慣化は、燃費の良い走行をするイメージ
捨てることは、最短経路で目的地に向かうイメージ
といったところでしょうか。
おいおい、車を乗り換えればいいじゃん、と思ったそこのあなた!鋭い!仰るとおりです。車を変えれば早く走ることができます。ただ今回はその選択は外しています。
なぜなら、あなたはあなた自身でしかないからです。他人になれるわけではないですし、いきなりエンジンが変わることもありません。
さて、このあたりの習慣化、捨てることについては、以前の記事でもお話ししております。ここでは長くなりますので割愛します。
感情を整えるシンボリックラベリング
不安な感情の行き着く先
さて、最後の感情を整える(邪魔者を排除する)とはどういうことでしょうか?
おおよそ想像がついているかもしれませんが、不安や恐れといった感情のことをいいます。
不安や恐れは冷静に思考することを邪魔します。
さきほどの車で例えるなら、砂利道を走りながら目的地に向かうようなものです。いつもなら、30分で着くはずが1時間かかる。
走っていれば石は弾け車体を傷つけ、最悪タイヤはパンクするかもしれません。そうすれば走ることすらできなくなります。
参考までに育休前に抑うつになった際は、まさにこのような感じでした。徐々に車体を傷つけられ、最後に「もう、だめだーっ!」となるんですが、まさに言い得て妙です。
・・舗装路を走る術を知っておきたかった。
そんな気持ちはさておき、石田くん(仮称)は、燃費の悪い走り方で、あっちこっち寄り道して、悪路を走っていることになるわけです。
これは、本人がどんなにがんばっていても、同乗者はたまったものではありません。車酔いや、目的地につかないイライラを隠している可能性がありそうです。
ドライバーはこの事実を、いつか同乗者が「もう違う車乗る!」と言いだす前に知っておいてもいいかもしれませんね。なにより自分のために・・。
不安や恐れとはなにか
話を戻して、最初の二つは一朝一夕ですることではありません。どちらかというと少しずつ積み上げていくものです。
なので最後の一つは、かんたんにできるものを紹介します。
それは、感情を言葉でラベリングする、というものです。
そもそも、不安や恐れとは、大脳辺縁系という脳のいくつかの部位が反応して起こる危機回避現象です。
目の前の状況を過去の記憶から検索して、「これヤバいやつや!」と感じ取り、それが不安や恐怖といった回避反応として現れます。
その中で、とくに命に関わるものは「一次的脅威」と呼ばれ、蜘蛛のおもちゃを誰かの手のひらに乗せてみた時の無意識の反応などがそれにあたります。
不安や恐れの感情のメリット
対して、意識的に理解や判断を行うのが、前頭前皮質の役割になります。でも、毒蜘蛛が手にのったかもしれない、近くで熊が出たかもしれない、そんな時に悠長にしていてもいいものでしょうか?
- これは蜘蛛だな
- 確か毒があったはず
- 刺されると命に関わる
- よし払い除けよう
なんてことをのんびり考えている間に刺されて天国に行くことになるかもしれません。
『危険を最小化し、報酬を最大化せよ』
これが脳にインプットされた組織化原理といわれています。(デイビッド・ロック著 最高の脳で働く方法)
その点において、考える間も無く体が動いていた、そういうことを無意識にできるのが大脳辺縁系のメリットです。
シンボリックラベリング
そのため、不安や恐怖は脳からのシグナルと考えれば決して悪いことではないのですが、いかんせん理性的な判断を至急求められる場合は邪魔になりがちです。
それを脅威反応を抑えるのが『シンボリックラベリング』という方法です。
端的に言うと、置かれた状態を言葉にする、だけです。
自分が焦り、混乱していて何も手がつかない状況であれば、私は「混乱している」「焦っている」などと自分にラベルを貼るように言葉で表します。
そうすると、大脳辺縁系の興奮が抑えられ、前頭前皮質の興奮が高まることがカリフォルニア大学の研究で明らかになっています。つまり冷静に考えやすくなるわけです。
負の感情を抑え込むデメリット
一般的には、「私は大丈夫!不安を感じていない」などと勇気を奮い立たせ、不安や恐怖を認めず拭い去ろうとするケースもありますがこれは逆効果です。
不安を抑え込むことにリソースを使うので、本来考えなければならないことに意識が向けにくくなるからです。
気持ちを落ち着けようと努力している時、目の前でどんな会話があったかわからず「え?今なんて言いました?」と聞き返すことも同じ理由です。
また、不安や恐怖を感じている時は、些細なことすら脅威に感じやすくなります。お化け屋敷や、肝試し、暗い夜道、経験があるのではないでしょうか?些細な音すら恐怖の対象になってしまいます。
仕事においてもそれは同じで、昔あった嫌な上司と話し方や仕事の進め方が似ていると感じただけで、真実は別だとしても脅威を感じます。
これは「〇〇かもしれない」で対応しなければ悪くすれば命に関わるためであり、脅威に反応しやすくするためですが、無理に抑え込むことがより難しいという理由でもあります。
感情を無理に抑え込むことには、もうひとつデメリットがあります。それは周りから見て、気持ちのいいものではない、ということです。実際に対面者の血圧が上がったという研究結果もあるそうです。
本来なら、不安や恐れ、困惑といった感情表現がありそうなのに、顔をひきつらせながら平静を保とうとしている。これは実際に目の当たりにすると、いつ噴火してもおかしくないという緊張感があります。
今の感情を受け止める
こう考えると、やはり感情は拒否するよりも受け止める、これがプレッシャー下で能力を発揮する大切なポイントであるといえそうです。
習慣形成や、捨てるに代表される選択と集中は、日々の積み重ねによる環境づくりですが、シンボリックラベリングはそれと比べると遥かにかんたんにできます。
自分を客観的にみる、俯瞰してみる、そういった必要はあるものの、自分のためと思えば試してみる価値はあるのではないでしょうか。
最後に纏めです。
まとめ
- プレッシャーに対応する3つの方法がある。
- 3つとは、習慣化・捨てる・感情を整える
- 車で例えるなら、習慣化は燃費の向上、捨てるは最短経路で向かうこと、感情調整は舗装路を走るイメージ。
- プレッシャー化では、低燃費、回り道、悪路を走るため、ほっとけば自分自身を傷つける恐れがある。
- 今の状況を言葉でラベリングすることで感情を整えることができる。
- 不安や恐怖を認めないのは逆効果。意思力を不用意に消費する。また、他者に不快感を与える。
- 感情を拒否せず、受け止めることがプレッシャー下で力を発揮するポイント。