先延ばしをなおせるとしたら?
私の先延ばし歴と先延ばし結果
私には5歳の娘と、1歳になる息子がいます。そのふたりに私の先延ばし癖が遺伝子しないか、そう思うたびいつもヤキモキします。
私は子供の頃から先延ばし癖がありました。
- 夏休みの宿題
- 期末試験対策の勉強
- 友達からの遊びの誘いの返答
- 進路選択
- 締切のある仕事
などなど、盛りだくさんです。今日は未来のふたりの子供と、同じく先延ばし癖があって、なかなか行動が起こせないひと向けに、
「自分のことはひとりでもできる」
「信頼を失わずにする」
「遅刻せずにすむ」
そんなことが手助けができるような工夫をお話ししていきます。
もしも、上に書いたようなことに憶えがあるひとは、もう少し読み進めても損はありません。
その工夫とは3つあります。かんたんなことではありますが大事なことでもあります。それは・・
- 思ってもみないことがおこると理解する
- 易しくはじめる
- 明日からはじめる
という3つです。
さて、上にあるような先延ばし癖、その後どうなったと思いますか?
- 意外とどうにかなった
- むしろ可愛がられた
- 自分にも周りにも迷惑かけた
もちろん3です。散々です。
宿題は、まあ迷惑かけましたね。親に。残り二日からがんばるけど当然うまくいかない。わからないこと、間に合わない事を親に頼りに頼っていました。
期末試験対策も同じです。ぎりぎりから始めるので、深夜まで親を辞書代わりにしていました。
友達からの誘いはもちろん減ります。進路選択に至っては真剣に考えていませんでした。
だらだらと大学受験に失敗し、その当時流行っていた「料理の鉄人」をみて調理師学校に通う事を選択するくらいです。
締切のある仕事は「まだ大丈夫」が口癖です。実際に言葉には出してないので、悪い癖ですね。ほどよいネガティブが成功する所以です。
結局間に合わせの資料と、間に合わなかった理由を考えるのに精一杯。上司は当然見破ります。だから信頼だって得られません。
・・どうでしょう。ひどい有り様ですよね。こうなりたいと思いますか?
「こんな親でごめんね」
そう言いたいところですがそうも言っていられません。だからこそ、解消してきた工夫は伝えていきます。
なんで先延ばししちゃうの?
ところで、なぜ先延ばしするのでしょうか?昔の私の心に聞いてみます。
「大丈夫、まだ間に合うよ」
「ちょっと考えるのめんどうくさいな」
「だってよくわからないし」
「ばかやろう!」と言いたいところですが素直に受け止めることから始めなければなりません。
どうやら昔の私は、将来の見通しが甘いようです。まためんどくさがりで、理解できないものへの不安も覗かせています。
さて、これは私だけなんでしょうか?
遺伝子の半分を受け継ぐ私の家族だけの性質でしょうか?
そうではありません。ひとはそもそも「最少努力」を求め、「損失回避性」があります。つまり少しでも楽をしようとがんばり損することを嫌がります。そうして未来よりも「確実な今目に見えるもの(確実性)」を優先します。
今でこそ生きるか死ぬかの生存競争はありませんが、大昔はそうではありません。過酷な環境で生き延びるためにさまざまな努力をしなければなりませんでした。
なけなしの糧を守るため効率化するのは必然です。将来手に入るかもしれない食べ物より、今目の前にある食べ物の方が大切です。それもこれも生きるためです。
そう考えると、
- 先のことを考えない。
- よくわからないものには手を出さない。
- 難しいものには手を出さない。
というのも自然なことだと頷けます。先延ばし民にとってはある意味朗報です。みんなそうなんだ!と言い訳が立つのですから。
ただ、ほっとくとあまりにも損失が大きいだけです。
娘と息子にはそうはなってほしくはありませんので、少しひとについて理解が深まったところで、ひとつずつ工夫を伝えていくことにしましょう。
思ってもみないことが起こると理解する
・・とある実験
とある実験で、37人の学生に卒業論文を完成させるのに何日かかるか?という質問をしたそうです。聞いてみたところこんな答えが返ってきました。
「すべてうまくいった場合」
平均:27日間
「すべてうまくいかなかった場合」
平均:49日間
だったそうです。ところが実際にかかった日数はというと、
「実際にかかった時間」
平均:56日間
予想通りに時間内で終わらせた学生は3割、およそ10名ほどだったそうです。
見込みちがいも甚だしいですね。
ここからわかることは2つです。
- 予想の倍は時間がかかってしまうもの
- 7割の人は予想通りにいかない
ノーベル経済学賞受賞のダニエル・カーネマンの著書「ファスト&スロー」ではこれを「計画錯誤」と呼んでいます。
計画錯誤、私の体験
私は先日1年間の育休が終わったところですが、「計画錯誤」して初日から遅刻しないよう、実際に車で会社まで通勤してみることにしました。
最短で20分、かかっても30分そんな道程です。
でも通勤してみてわかったことですが、思ってもみないことが起こるものです。
- 1車線まるまる道路工事をしている場所がある
- 朝の通勤時間帯の渋滞が思ったよりひどい
- 雪の日の渋滞は想像以上に時間がかかる
- 行けたはいいけど忘れ物をしている
- ズボンのチャックが空きっぱなし
遅刻な直接的な原因になるものから、うっかりミスまで様々です。20分程度は余計に時間がかかりました。でも、おかげさまで予行演習が生きて、無事遅刻することなく出勤することができました。
「計画錯誤」がある、と知るだけでも違う行動が取れるようになります。
加えて私は、仕事でのスケジュールづくりに際してとても気が楽になりました。上司の評価を気にして、タイムアタックのようながんばればできるようなスケジュールで組んでいたからです。
今は、経験が少ないものは、想定の2倍の時間を予め見込んでいます。やってるうちに予測精度は上がるでしょう。それよりも、思ってもみないことが起こることに対応できない方が問題です。
自分がなぜスケジュール通りに物事を進められないのか、それがわかったことが何よりの収穫です。おかげで慌てて人の手を借りる事は減りました。
易しくはじめる
先延ばしをしないようにするには、
「易しくはじめる」のも有効です。
一回始めてみると、物事の全体感が掴めるものです。やってみて、あれ?これやばいな。2、3日じゃ終わらんぞ・・そういう経験は誰しもあるのではないでしょうか?
だから、とにもかくにも少しでもいいから「はじめてみる」ことが大切です。
ところが、見通しがたたないものをひとは敬遠します。先程もお伝えしたように、ひとは安心や安全が大好きで、将来手に入るものより、今目の前にあるものを大切にするからです。
なんだか「よくわからないこと」をはじめないで、部屋の掃除といった「それなりに必要性がある」でも「よくわかっていること」を始めるのも同じ理由です。
さて、とはいえこういう話もあります。
とある七面鳥の人生
『あるところに七面鳥がいました。
この七面鳥はたいそう飼い主に可愛がられ、大切に育てられました。健康に育つよう、美味しいご飯を与えられ、住み心地のいい小屋もあてがわれています』
『七面鳥は思いました。なんていい飼い主に育ててもらっているのだろう。この信頼関係はずっと続くはずだ、と』
『そんな日が999日続きました。当然明日も幸せで記念すべき1000日目が待っているはずです』
『ところが幸せいっぱいの1000日目を期待した七面鳥は、その日飼い主に殺されてしまいました』
・・なぜだと思いますか?
『その日はクリスマスイブ。クリスマスには七面鳥の丸焼きは欠かせません。飼い主は、家族と素晴らしい一夜を過ごすために七面鳥をとてもとても大切に育てていたのでした』
この話は、少し表現を変えてますが、心理学者のナシーブ・タレブ著「ブラックスワン」の中で語られる物語です。ブラックスワンとは、黒い白鳥、つまりありえないできごとを象徴する言葉です。
要約すると・・
- 安心で安全なんてかんたんに終わるんだよ
- 思ってもみないことが起こるんだ
ということです。
世の中の思ってもみないこと
「鳥の作り話じゃん」
そう思うでしょうか?
でも、実際に2020年にはコロナが大流行しました。世界中で500万人以上が亡くなっています。
中国の武漢の報道の段階では、世界中の人がマスクをつけて生活するなんて誰も考えてはいなかったのではないでしょうか?
不確実な未来から逃げてばかりいたらとんでもないしっぺ返しがくるかもしれない。
そういうことは認識しておくべきです。
とはいえ大変なのは嫌です、ひとですしね。
だから・・
『易しくはじめる』
自分が「こんなの超かんたん!」と思えるようなことをすることが「はじめてみる」ことにとても効果があります。
宿題だったら・・
得意科目の問題を一問だけ解く。
それでも大変だと思うなら・・
宿題を机に広げるだけ。
締切のある仕事だったら・・
仕事の内容だけ確認してみる。
それでも大変だと思うなら・・
仕事の内容の最初の一文だけ読む。
一歩進むことができれば、意外と次が気になりだすものです。
「まったくわからないもの」が「ちょっとわかるようになる」のですから、怖がることが減りむしろ少ししかわからないことに不安を覚えるようになります。
そうなればしめたものです。後は、安心・安全を追求する人間らしさに沿って動けばいいわけです。以前よりも前向きに取り組むことができるようになります。
『少しだけ進むでいいんだ、でも間違いなく進む』
これができるように『易しくする』ことが大切です。
明日からはじめる
なにを言っているんだ?!と思うかもしれませんね。「今日、今、この瞬間から、はじめる!」のが理想のような気もしますよね。
上司にはそのままでは言えないと感じる言葉です(笑)
でも、明日から始めましょう。これも「易しくはじめる」の延長線上のお話です。
今の予定を押し退けて、
いつからしよう?
なにからしよう?
どこでしよう?
どのようにしよう?
こんなことを決めなければならないのに、今日、今、この瞬間から、その他の予定を押し退けて、はじめる。
「思ってもみないことが起こる」と思えばこそ、このスケジュール調整は、スケジュールが入る側も、押し退けられる側にもメリットはあまりありません。
だから『明日からはじめる』これが大切です。
なにも必ず明日というわけではありません。空白のスケジュールに予定を入れることが無理なくはじめられる工夫だということです。
とはいえ、先延ばしの対策であると考えると、何日も先ではモチベーションも下がり、やると決めたことも記憶の彼方に飛んでいってしまうので、明日あたりが理想です。
そして、いつやるかを決めるなら、
明日(各々の時期)になったら、〇〇をする。
といったように「いつ」は固定してしまいましょう。
「〇〇したら⬜︎⬜︎する」というのはイフゼンプランニングというテクニックです。
ただ漠然と「やろう!」と決めた時よりも、実行確率が2倍から3倍に高まる研究結果があります。
また条件をなるべく固定することでルーティン(習慣)になり実行がさらにかんたんになるからです。
「新しくやることを必ず明日やるひと」というアイデンティティも備わってきます。そうすると「やって当然」のマインドも持てるようになり、実行を後押ししてくれます。
なんだかカッコ悪いアイデンティティですけどね(笑)
まぁ、それはさておき、より易しく始められるよう予定は白紙のスケジュールにいれる。
それが先延ばしを防ぐ工夫の一つです。急がば回れ、というやつです。
先延ばしの工夫をしたあとの感じ方
さて、思ってもみないことが起こることがわかっている君は、空白の未来に予定を入れることにした。
まっさらなスケジュール表にいれてあった「先延ばししたくない大切なこと」でも、それは驚くほどかんたんなことです。
最初に目が入った瞬間に思うことは・・
「あ、今日これやるんだった・・・・・まぁこんなかんたんなことならやってみるか」
そんな感じ方ができるようになります。
こんな工夫ができた私は先延ばしが減りました。未来の娘と息子にも伝えていくつもりですが、みなさんの助けにもなれば幸いです。
最後にまとめです。
まとめ
- 先延ばしは、ひとであれば普通にするもの。
- 先延ばしは、自分や他人に迷惑をかけ信頼を失う。
- 先延ばしをする人は、見通しが甘く、めんどくさがり、理解できないものへの不安や恐れが強い。
- ひとは本来、最少努力・損失回避・確実性を追求する性質である。
- 故に、先延ばしすることを悲観しすぎる事はない。
- 思ってみないことが起きる、ことを理解することが大切
- それから、易しくはじめられることを、空白のスケジュールに入れ、無理なくスタートを切れるようにすることが大切。
- イフゼンプランニングとルーティン化が行動をさらに強化してくれる。